カフェ・サン・マルコⅡ 放逐の地、流謫の空、日常の崖、超常の涯、僕たちの心臓はただ歌い出す |
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・BELL’S SCOTCH(ベル スコッチ) いくつものエピソードが混じり合いつつ、丸く収まった、エディンバラの甘い夢。ブレンデッドウイスキーの極地であるような、安息の地であるような……。これ以上何かを加えると、きっと夢は儚く破れてしまうのだろう、そんな夢の中の警鐘。 |
今日は3月11日、 じつに寒い朝だった。 で、今宵は、 太平洋の遙か彼方の向こう岸、 チリの詩人の作品を読んでみましょうか。 題名は英語だけど、スペイン語の詩です。 離別 Depart ビセンテ・ウイドブロ Vicente Huidobro
いかなる喉から羽もなしに
至点の花々が 咲き誇っていたのは虚空に向かって そうして我々の泣き叫びは徒労だった
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by caffe-san-marco2
| 2026-03-11 22:35
| 試訳
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2010年に東京町田で結成されて以来、 日本全国のライブハウスを沸かせ、 ごきげんな酒をぐいぐい進ませ、 塩辛い涙をほろりと零させてきた、忘れてモーテルズが 3/6(金)に9枚目のフルアルバム『出会っちまった』を配信リリースしましたが、 3/14(土)には、同作をレコードでも発売!! そして、この日、嬉しいことに大阪でレコ発ワンマン。 心斎橋BIGCATで忘れがたない一夜を……。
![]() さて、モーテルといえば、自動車、 今宵は、自動車をドライブする文章を読むことにしましょう!! ロンドンのバンドがロサンジェルスにレコーディングにやって来たのだけど、 3か月奮闘したものの、いい曲がぜんぜん出来ない膠着状態に陥って、 メンバーの1人がスタジオから逃亡してドライブに出かける、という場面や。 ハリ・クンズル『民のいない神』(木原善彦訳、白水社〈エクス・リブリス〉)より① ☆二〇〇八年 彼はたばこを吸い終え、吸い殻をスタジオ前駐車場の熱いコンクリートにこすりつけた。レコードを作るか破産か。あるいは、ノアの薬物と銃を盗んで町を出、次に見つけ出されるまでの間に問題が解決していることを祈るか。選択肢は常にある。問題は目の付け所だ。彼は車に乗った。 車の運転は、アメリカで自然に感じられるほぼ唯一の行為だ。伝統的行為。愛国的行為。アクセルを踏むと、周りが歓声を上げているような気さえする。カマロは一ガロンのガソリンでおよそ百ヤードというとんでもない高燃費。音も戦車が近づいてきたかのよう。一九七〇年代に作られたそのオレンジ色の稲妻は環境破壊の象徴だ。しかし、このスポーツカーに乗れるなら、未来がどうなってもいいと思えた――老後に温暖化した地球で筏(いかだ)生活を送ることになっても、あるいは遺跡となったビレリッケイの町でドッグフードを食べて生活していくことになっても。 LAは恩知らずな死の風景に変わっていった。砂漠と呼ぶのは正しくない。荒れ地。町の裏庭。目にしたくない、醜悪なものを捨てる場所。倉庫と加工工場。鉄塔とパイプライン。壊れたもの。廃棄物。サン何とかという名の、町ごとゴミになった一角もある。コンクリート以外は全てゴミ。人が住んでいる箱形のコンクリート、そしてゴミみたいな人々が買い物に通うコンクリートのモールの前にはコンクリートの駐車場。彼はハイウェイ沿いに並ぶそんな場所に立ち寄ることなく走り続ける。給水塔、虎をモチーフにしたどこかの高校のスポーツチームのシンボルマークが描かれた壁。数分ごとに携帯電話が鳴っていたが、彼は気に留めなかった。ラジオから聞こえるのはキリスト教の説教と甘ったるいジャズだけだったが、それも気にならなかった。道は骨のように白く、空はエアブラシで描いたように青く、彼が向かっているのは地図の中で最も空っぽな場所だ。何も考えずにひたすら走る。速い車の隙間に割り込み、ジャンクションで分岐し、カーブを抜けながら立体交差をくぐり、さらに惨事から遠ざかる。 ![]() ![]() ![]() #
by caffe-san-marco2
| 2026-03-09 21:29
| 小説
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今年で20周年を迎える、心斎橋火影(ほかげ)でありますが、 おぉ、いつの間にかホームページがリニューアルされてますよ!! ステージと客のフロアが地続きで鏡張りの壁、 酒を入手するためにさらに地下へと潜入していき、 牢獄めいた酒場へと沈み込み、のめり込んでゆく……。 HOKAGEでは、客も自分のポジションを臨機応変に自ら見出していく、 そういう楽しみがあって、 直火でもええし、放射熱でもええし……。 平日だろうが週末だろうがお構い無しに、 HOKAGEでは連日連夜、物凄い激闘乱闘奮闘が繰り広げられておりますッ!!
というわけで、今回は激闘の話を。 子母沢寛『昼の月』より③ 次の日は、本当に鈴木氏に案内されて、「大市」のすっぽんへ行ったが、桜井は大喜びをしたが、大岸先生は、見ただけで気味が悪るいといって、酒ばかり飲んで帰って来た。 「桜井さんもとんだ下手物(げてもの)食いだね。あれぁひでえね」 酔って、そんな事をいって、帰る鈴木屋敷の門の前で、やって来た三橋先生とぱったり逢った。 「おい、厄介が起きたぞ」 「なんでしょうか」 桜井がそう言ったが、三橋は、まあまあ待てというような顔をして、先きに立って門を入って行った。 「今、ここへ来る時に、三条の川原に首のねえ侍の屍があったといって騒いでいたよ。面倒だから見にも行かなかったが、いよいよ目的のためには手段を選ばんという風潮が強くなって来た。こ奴を突き詰めて行くと」 と三橋は、ちょっと、四辺(あたり)を見て、 「結局は、戦さだね。はっはっは」 と笑った。 座敷へ入るとすぐ今度は大岸先生が、 「先生、厄介とはなんですか」 ときいた。 「実ぁね、来る二十日、城中で、また奥詰剣術方の試合があるとさ。公方様が滅法なお好きの御様子でねえ」 「え?」 「みんな味方なんだ、勝っても負けても厄介じゃあねえか」 「そうですなあ。で組合わせは定(き)まりましたか」 と大岸は、人柄だけに、本当に面倒な事だと思ったし、桜井は桜井で、この前江戸での事がある、勝つにしろ敗けるにしろ、なにかこうまるで関係のない世界のもの達までが、こっちをじろじろ見ているようでどうも面白くないものである――そんな事を思っている。 「いや、組合わせは目下男谷先生、伊庭先生、戸田先生など慎重に御詮議のようだよ。はっきりせんが、おれが早耳でもれきいたところでは、伊庭の若先生八郎さんにはわれら戸田隊の沢隼之助、榊原鍵吉さんには一刀流から男谷先生の門に加わった本所二ツ目の天野将曹さんなそうだ」 「ほう」 「ね、こういう組合わせから考えると、今度は多く同派同流の者を組合わせ、角力で言うと花角力という事になるんじゃあねえかな」 「そうですか」 「われわれ江戸でやったものは、今度は出れるか出れんかわからんな」 「それは結構な事ですよ」 と桜井はほっとした顔だった。 「しかし出れんのも少々しゃくだな」 という三橋へ、 「いやいいですよ」 と桜井。 「今度は大岸先生には是非出ていただきたいものだ」 「いやあ、死恥はかきたくない。わたしは真っ平だ」 と大岸先生は、本気でいそがしく手を振った。 #
by caffe-san-marco2
| 2026-03-08 11:25
| 小説
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まだまだひんやりとした寒さが居座っておりますが、 ちょっくら早春の花々の咲き具合を見に行きたいような そんな頃でもあります。 明日と明後日(3/8・3/9)、group_inouのimaiさんが 関西(京都→大阪)にライブしに来てくれますよ!!
若い小娘とデートでもしたいような感じやけど、 おっさんが若い子に惚れられるなんてことは 小説のなかだけのことと 固く堅く硬く思っとく方が無難やね。 おっさんと小娘との恋なんて、 あってはならない、とまでは言わんけど、 とんでもないハプニングでっせ。 まったく、おっさんにはひとり旅がふさわしい……。 里見弴『多情仏心』(新潮文庫等)より ☆ひとり旅 ちらほらと花の便りを聞く時候になって来た。着るものが一枚へるごとに身も心も軽くなって行くのに誘われて、病(やまい)に対する信之の不安は、忘れるともなく薄れかけていた。それには、人知れず摂生(せっせい)していたおかげにか、その後引き続いて、吐血を見るようなこともなかった。そうなると、頻(しき)りに旅の心が動いて来た。――京都、奈良、宇治、第一にあのへんがあたまに浮んだ。目も遙かに、蓮華(れんげ)と菜種とが続いて、果は薄霞(うすかす)んだ連山まで、一望のうちにおさめるような、どこでもいい、田舎の旧家と云った感じの静かな宿屋に転がって、ひとりポカンとしていたらさぞいい心持だろう、と思った。それもいいが、ぼつりぼつり杜切(とぎ)れがちに、もの柔かな京都弁で、何か水のような、毒にも薬にもならない話をしかけてくれる女が、寝ころんだ枕もとに、畳一畳ぐらい離れて坐っていてくれても悪くない、とも思った。里奴(さとやっこ)と云う妓(おんな)のことが、それにつれて考え出された……。 その妓とは、一昨年の夏の末ごろ、大阪京都へちょっとした用件を云いたてに十日あまりの旅をした時、中学時代に同級の仲よしだった京都産れの日本画の画家(えかき)に招かれて、祇園の茶屋で、五晩六晩つづけざまに逢ったのが、馴染(なじみ)そめだった。口数を利かない大人しやかな妓(こ)だった。眉尻(まゆじり)がやや八の字なりにさがったのが、いつも彼の女を愁(うれい)深く見せ、ひとり仲間をはずれて、裏の小流れに臨んだ欄干にでも凭(よ)って立っているところを呼ばれて、ニッコリ振り返ったりすると、今が今まで、そっと泣いていた人のように思われるくらいだった。その薄命らしいところが、旅にいる信之の心には、殊(こと)に哀れふかくも懐しく感じられた。彼方(あちら)でも、信之を嫌っているとは思えなかったけれど、そうかと云って、内輪に内輪にと、いつも座敷の日陰とも云えるあたりに身を退(すさ)っている彼の女は、決して人目につくほどの特別の好意を見せるようなこともなかった。今後に何か事が起ろうなどとは、夢にも思い設けずに、信之はやがて東京へ帰って来て了(しま)ったのだった。それに一つには、十九と云うその妓の年齢から考えても、彼にはなんとしても自惚(うぬぼれ)られなかった。永い間の恋愛生活で、女の方から先に立って好意をみせて来るのは、きまって年増(としま)だった。遠慮のない友達などがよると、よくそれを云って冷嘲(ひや)かされるくらいだったが、いい御機嫌に廻っている時の信之は、故意(わざ)と洒々(しゃしゃ)とした顔つきを扮(よそお)って、 「ふん、十代の小娘なんぞに、俺のいいとこが解ってたまるもんかい。なんてったって、問題はここだからね」 と、心臓のあたりをハタハタと打って見せたりした。そんな風で、若い娘には、たまにこっちから好意はもっても、深く惚れ込むと云うような気持になることは稀だったし、不思議にまた彼は、年のいかない女には縁遠かった。 ところが、東京に帰って二三日ほどすると、画家(えかき)の矢崎から、里奴の絵葉書に、この妓(こ)が君のことばかり云っていて大変だ、近々にもう一度出直して来る必要がある、などと云ってよこした。文学趣味の女将(おかみ)がやっている例の茶屋で、酒肴(しゅこう)の載っている食卓(ちゃぶだい)の上ででも書いたものとみえて、一筆女将の冷かしのような文句やら、里奴はじめ三四人の馴染の妓の自署やらも添えてあった。 #
by caffe-san-marco2
| 2026-03-07 15:52
| 小説
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やっぱし岩崎愛さんの歌はええなあ。 来月、ひょうたんハウスってところで 今回はお部屋探しの話。 丹羽文雄『かしまの情』(新潮社刊)より② 林檎をとり出し、掌で撫で、皮の上からこまかい歯並をかしっと立てた時、 「東京までですか」 青年が声をかけた。おだやかな瞳の色だった。給料生活者なら、多少は相手の顔色を読むだろう。それが、なかった。警戒をしていて、気の毒をした。萬龜(まき)は、林檎を一つ、黙って差し出した。うけ取り方が、また鷹揚だった。そして話がはじまった。「……いつでも東京へいける人、住居のある人は、仕合わせだと思いますわ」 半野と名乗る青年は、唄の修業で、田園調布の知人宅に時々厄介になるという。流行歌手Y・E氏に弟子入りしているとも言った。 「絵の勉強がしたいのが目的なのに、住いに追われて、絵どころの騒ぎではありません。それに会社に勤めていますから、大変ですわ」という割には、萬龜はまいっているという顔をしていなかった。「朝鮮から引揚げてから、絵の先生のところに一週間、寮生活を半月、また追い出されて、目がとび出るほどの高い宿泊料を払って二タ晩待合のような旅館に泊まったり、そしてやっと四畳半が与えられた家では、女中同様にこきつかわれて、あたしの東京生活は、住いのために苦労して歩いているにすぎませんの。部屋のさがし方が拙いとは思いますけど。どこかいい貸間はありませんか」 「袖すり合うも他生の縁といいますから、僕もせいぜい心掛けます。住所を教えて下さい。見つかり次第、電報をうちますから。アパートには、いくらも部屋があるんですよ。権利金さえ出せば、簡単にさがせますがね」 「女ひとりの勤人生活で、そんな大金は出せませんわ」 #
by caffe-san-marco2
| 2026-03-06 18:02
| 小説
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