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カフェ・サン・マルコⅡ 放逐の地、流謫の空、日常の崖、超常の涯、僕たちの心臓はただ歌い出す


過ぎ越しの少年 歩いてゐる 環百道路の向こう側 不気味に流れる根無し草 道草模様の漂流者 あゝ帰らざる故郷…… 棲めばエル・ドラド…… 記憶のギャラリーで迷子になって…… 愚者の漬物石と隠者の糠床……
by Neauferretcineres
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メモ帳
わてが最近、買うた酒 のコーナー
Kloof Street Swartland Rougeクルーフ・ストリート スワートランド ルージュ 南アフリカ赤ワイン
ふつうアフリカワインのラベルには動物やら何やらの生き物やら野生的な風景やらが
描かれてるものだけど、Mullineux(マリヌー)のこのワインのラベルは
夕暮れ時に一瞬見られる不思議な色合いの青空のような、淡い青の地に
控えめな金色で文字が記されているだけ。
そこがいい。
味は濃厚。空に憧れる土の浪漫と情愛、いささかの辛苦。

岡山ペパーランド巡礼記――内田百閒とハードコア

なんかこのごろ、関西のパンク界隈で
ペパーランド(岡山の老舗ライブハウス)でライブするのが
流行ってるみたいなんで、
この期に乗じて僕も、
ずっと行ってみたかったペパーランドを
先月、初訪問した、という
ペパーランド巡礼記を今日は書きま!!!

最近のライブハウスは、ほかのエンタメ施設と同様にふつうの繁華街のなかに作られる場合がわりと多いのだけれど、
昔のライブハウスはちょっと特殊な場所にあったりする。

1974年にオープンした(ということは、来年、50周年!)ペパーランドも
(今どきの視線で見るなら)けっこう特殊な場所に位置している。
有名なバンドが数多くライブしてる、と聞くと、ふつうは、岡山駅にほど近い繁華なところに
あるんじゃないかと思ってしまうわけだけれど、
ペパーランドがあるのは岡山駅からはだいぶ離れた、岡山大学のそば(岡山大学の中ではないが、岡大のキャンパスとキャンパスの間を走る道路に面してペパーランドが立地している)。
岡山駅から歩いていくと25分くらいで、一応最寄駅として、JR津山線の法界院駅というのがあるんですけど、
本数の少ない、ローカルな駅でございまして……(法界院というのは、観音様で有名なお寺の名前だそうです。駅からはちょっと離れてるけど)。

で、さて、
僕は法界院駅からペパーランドに向ったんですけれども、
進んでいくうちに岡大に包囲されるかたちとなって、
あれ迷ったかな、とめっちゃ焦りつつ(地図も携帯電話も持って来てなかったから)、
とりあえず大きい道があったのでそれを南下すると、無事、ペパーランドにたどり着けました。
ペパーランドの外観は、ポスターがいっぱい貼ってあって、昭和の見世物小屋的な感じもあるし、
店の前にパンクスが何人もいてたから、一瞬で、ここや、ってわかりました。
わかりやすい外観、ってのも重要よね。
まあ、超わかりにくい外観、ってのもそれはそれでおもろいねんけど。
この前、大阪MUSEに行ってんけど、心斎橋駅からMUSEにたどり着くのに、なんか知らんけど、1時間半かかったからね。
ちゃんと場所を調べておかなかった僕が悪いねんけど(郵便局の隣の隣ということをしっかり頭にいれておけば、難なくたどり着けたはず)、
あのMUSEはつい素通りしたくなる魔の場所にありますなあ。
ライブハウスは1階か地下でそこそこ目立つ外観、というアングラな固定観念がどうしても僕のなかにあったこともあいまって、
あれあれあれ、どこやねん、ってなったわけやけども。
ギャップ的立地のMUSEにたどり着けない、素通り体験も、厳しい人生において一度はしておきたい、おきまりのステップでありまして、
これが本当の”通過儀礼”であります!!!
女神ミューズのお気に召すか、ここでふるいにかけられるわけね……。
ビル内も、若干カラクリ屋敷状態になってて、でもいろいろと親切な工夫が凝らされていて、
非常に快適で愉快な空間となっております。
(というわけで、ライブを観のがしてしまった、ジルコニアにはここでお詫びしておきます。アホなパンクスでごめんなさい。)
方向音痴な人が大阪MUSEに行く場合、MUSEを探さずにまず心斎橋郵便局を探してください、そこを基点にして、ライブハウスを探すのではなく、ダンジョンもしくは城へと潜入する要領で探せば、MUSEに必ずたどり着けるはず……。

ええっと、何の話だったかな、暑さのせいかだいぶ迷走してますが、
ペパーランドに話を戻しまして、
ペパーランドは予想通りの外観で、とてもわかりやすかったのだけれど、
内部はぜんぜん予想と違ってましたね。
僕は何となく、江戸時代の寺子屋や私塾、あるいは閑谷学校、
額に入った犬養木堂の書が掲げられているようなサロン、
あるいは大正期のカフェ、インドやパキスタンの紳士社交クラブが戦後アングラ化……
みたいな感じをイメージしてたんやけど、
だいぶ違ってましたね……。
狭いけど、めっちゃ現代的で、メジャーのバンドにも難なく対応できるような感じで、
何万人も入るロックコンサートの会場をそのまま縮小して縮小してコンパクトに小さなハコにしたような感じ、
マクロをミクロに変換・映写したような、巨大世界を微小空間へとシャキッと変圧・転生させたような、
そんな感じをまず受けましたね(音に関しても同様の印象)。
老舗やから、なんかごちゃごちゃしてるんやろうなあと思いきや、
非常に現代的で整然として、スピーカも頭上に置かれていたりと、
効率的な空間利用が考えられている、シェイプアップの力学が常に働いているような店内でありました。
老舗だけれど古くささが全然なくて、いい意味で期待を裏切る、という点では、
神戸のチキンジョージと一番似てる気がした。瀟洒、というか、
神戸の人間も岡山の人間も、しゃれた新しいもの好き、好事家気質なんは似てるんやろうなあ。

ペパーランドでもう1点意外やったんは、
店名からなんとなく、熱帯的でラテン的でちょっとブリティッシュな感じなのかなと思ってたんだけど、
そのイメージとはむしろ正反対な、ドイツ的な秩序だった端整さがそこにはありましたよ。
ここで思い出したのは、岡山市出身の作家内田百閒ね。
百閒のいろんなエピソードや夢幻的な文章から、百閒を無軌道ですっとんきょうな人物のように思ってしまいがちであるけれど、
その一面では、百閒は東京大学独文科を卒業し、陸軍士官学校や海軍機関学校のドイツ語教官となり、
法政大学でドイツ語教授も務めたわけで、
ドイツ語のプロだったはずだし、社会人としても立派にやっていけてたのであって。
ドイツ語というのは、文法がなかなかやかましいというか、名詞・形容詞が格変化するので、
それをちゃんと覚えないといけない、という面倒な言語なんだけど、
文法のルールさえちゃんと押さえておけば誤読しにくい、という秩序立った言語でもありまして、
明治以来日本では、いわゆる名文家と呼ばれる人は、
ドイツ語に堪能なケースが非常に多い、というそういう傾向もあります。
たとえば、森鷗外や芥川龍之介ですね。太宰治も大学は仏文科だけど、ドイツ語もできたよう……。
逆に、小林秀雄等、フランス語をメインにやった人たちは悪文家が多い。
内田百閒の場合、ドイツ的文法的厳密さや文章の骨格の正しさが基礎になってるからこそ、
幻想味や滑稽味がひじょうに生きてくるわけなんだけど、
同じ岡山のペパーランドにもそのようなドイツ的骨格の正しさや端整さを感じましたね。
そういう秩序立った静的な土台があるからこそ、動的なパフォーマンスが生きてくる、という。
ラテン的なライブハウスというのはけっこうあるけど、
ドイツ的なライブハウスは日本では珍しいんじゃないかな……。

しかしあれですよ、
大学のすぐそばとはいえ、
べつに繁華街でないところで、しかも狭い場所で、50年近く、
ややこしいバンドマンその他の表現者たちとややこしい客たちを相手に、
個人経営というか夫婦経営でやってきたというのは、
やっぱりなかなか不屈の精神、というか、エキセントリックな最尖端にうち興じる精神、
がセンターにあるのでしょう。
最初の方に書いたように、ペパーランドの最寄駅は津山線の法界院駅なのだけれど、
法界院駅で下車せずに津山線を北上していくと、金川という駅がございます。
ここには江戸時代に弾圧・迫害されながらも信条を貫いた日蓮宗不受不施派の祖山があります(ペパーランドの近くにも不受不施派のお寺がある)。
そして津山線をさらに北上すれば、終点はもちろん津山でありますが、
津山もまた例の事件があったり、サムハラ神社という知る人ぞ知る的なところがあったりと、
実は岡山市北区から津山にかけては、かなり恐い土地、夥しい流血の地でもあります。
ペパーランドもそういう精神風土を背負っているのかな、それはまだ1回行っただけだから、
僕としてはなんとも言えない。
なぜか大阪にもサムハラ神社があるので、津山まで行けない、という人は、
大阪のサムハラ神社にお参り下さい、血を鎮めるために。

例によって、ライブ終ったあと、当然のことながら、終電はなくなってるので、
ぶらぶら岡山の街を歩いておったわけですが、
最近僕は、ふと気づくと、旧街道に迷い込んでるという現象が頻発しておりまして、
岡山でもあの夜、気の向くままに歩みを進めておると、
いつのまにか、西国街道の金刀比羅神社というところにおりました。
ここはほんまに小さい神社だから、大したことないように一見見えるけど、
実は岡山城のお殿様が代々崇拝してきて、一般民衆にも霊験が知れ渡っていた、
もの凄い神社なんですねえ……。
主祭神は、大穴牟遅命(大国之命)でありまして、
大国→大黒
ということで、霊験あらたかではあるけれど、
大黒天(シヴァ)に通じるノワールな恐さも感じさせられるスポットであります。

黒といえば、岡山では無論、あの烏城と呼ばれる黒い城、岡山城も
思い浮かんでくるわけでありまして、
岡山人は意外と、黒が好きなんやろうか。
胡椒ペパーも黒やし(黒じゃない胡椒もいろいろあるが)。
黒といえば、ハードコア。
というわけで岡山市は殿様から民衆にいたるまで真黒な、
ハードコア・シティであるということが判明した、
今回の岡山巡礼でありました。
岡山の3大ハードコア・スポットは、
  • ペパーランド
  • 金刀比羅神社
  • 烏城
でありますよ。皆さん、覚えておいてください!

まあ、それにしても、
武田充貴さんのドラムを兄(ああ)さんの本拠地岡山ペパーランドで聴けたのは感無量であります!
充貴さんのライブはじめて観たんは、心斎橋のホカゲでリアルレゲエ観たとき(その後、難波ベアーズでもリアルレゲエ観た)。
僕がハードコアというものにほんまに惚れたんは、あの充貴さんのドラムをあのステージとフロアが一体のホカゲで聴いたときやったね。
あのリアルレゲエは忘れられぬ。
充貴さんはめっちゃ恐い人やと思って、うかつに口もきけんように思って、でもあれからずっとファンやって、
充貴さんがドラムの大阪のマスターピースのライブ、
時々観に行って、ソリドリズムも観たりして、
でも岡山で観れたんはやっぱりラッキーやった。
(僕も充貴さんに岡山まで呼び出された、ということにしておきたい……。)
クリッキークルーのボーカルの人が、じつにスマートにフロアの客たちに指導を入れてたのも新鮮やった……。
これが岡山の流儀かッ! と思いましたね。
関西のバンドと地元岡山のバンドとで鐵槌をペパーランドに迎えて
客同士も仲よく、ほんまええ夜になりました。
武田充貴さん、でえれえダンケ! また大阪で会いましょう……。ほなアリベデルチ!
(せっかくピザ用意してくれてたのに、喰わずに帰ってゴメンなさいね、
実は岡山木村屋のパンを夜食用にすでに調達してあったけん、
それに大阪の人間はいらちやから、もうすでに酔っぱらってしまった後やったし……。


岡山ペパーランド巡礼記――内田百閒とハードコア_b0420692_18271347.jpg

谷中安規《瞑想氏》


今年はガソリンの四日市にライブ観に行きたいなあ、と
考えててんけど、
岡山に行ったから、四日市巡礼は来年にしようか、
と思案中……。
四日市・岡山・(リアルレゲエの)舞鶴の
トライアングルの微妙な中心に位置する大阪……。

ギターパンダも本場ペパーランドで観てみたい……。



パンダも白黒だから、じつはハードコア?

by caffe-san-marco2 | 2023-08-19 19:15 | ライブ情報・ライブレポート | Comments(2)
Commented by saheizi-inokori at 2023-08-20 11:04
ドイツ語が解りやすい文学をつくる!鷗外がドイツ語を教えている話を読んだのは何だったか。小倉でしたね。
ドイツ的なライブハウスってのもあるんですね、おどろき。
百間は大好きです。
Commented by Neauferretcineres at 2023-08-20 22:54
> saheizi-inokoriさん
コメントありがとうございます。 鷗外は医者なので当然ドイツ語をちゃんと勉強しています。
医者でなくても戦前は旧制高校で第2外国語としてドイツ語を習う人が多かったようです。
太宰治の「走れメロス」は、ドイツの詩人シラーの作品をもとにしているといわれてます。
戦後はドイツ語やドイツ文学はいまいち人気ないですが、北杜夫はドイツ文学に影響を受けた名文家ですね。
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