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カフェ・サン・マルコⅡ 放逐の地、流謫の空、日常の崖、超常の涯、僕たちの心臓はただ歌い出す


過ぎ越しの少年 歩いてゐる 環百道路の向こう側 不気味に流れる根無し草 道草模様の漂流者 あゝ帰らざる故郷…… 棲めばエル・ドラド…… 記憶のギャラリーで迷子になって…… 愚者の漬物石と隠者の糠床……
by Neauferretcineres
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メモ帳
わてが最近、買うた酒 のコーナー
Kloof Street Swartland Rougeクルーフ・ストリート スワートランド ルージュ 南アフリカ赤ワイン
ふつうアフリカワインのラベルには動物やら何やらの生き物やら野生的な風景やらが
描かれてるものだけど、Mullineux(マリヌー)のこのワインのラベルは
夕暮れ時に一瞬見られる不思議な色合いの青空のような、淡い青の地に
控えめな金色で文字が記されているだけ。
そこがいい。
味は濃厚。空に憧れる土の浪漫と情愛、いささかの辛苦。

ゆっくりカツドンを食べながら、ゆっくりカツドンのような風景を眺める――辻まこと「引馬峠」①

本日、10/4にTHE BACK HORN
結成25周年シングル『最後に残るもの』
がリリースされました
(CD[2曲]+Blu-ray[ライブ動画]+盾のセット販売で、
CD単体だけでの販売はありませんが、
タイトル曲とカップリング曲「フェイクドラマ」は、
デジタル配信でも聴けます)。




シングル発売にあわせたインタビュー記事も、
ネット公開されましたので、そちらもぜひお読みください。
25周年おめでとうございます。
30周年だと、もうベテラン〈古参兵〉の仲間入り、って感じ
(40周年だと、もはやゴースト〈鬼〉もしくはクリスタル〈権化〉じみてもくるし、
50周年はワンダー〈仰天〉……)だけど、
25周年というと、まだまだ先が見えないぞ、っていう青さもありつつ、
しかし自分たちの足跡をやれやれと振り返る余裕も出つつ、ってところなのかな?

バックホーンはメンバー2人が福島県出身ということですので、
今回は福島県(会津)が出てくる文章を読んでみることにします。

福島県の南の茨城県は、ボーカルの山田将司さんの出身県ですけど、
純音楽家として知られる遠藤賢司さんも茨城県の出身でありまして、
今月そのエンケンさんの命日の前夜、
新宿ロフトで開催されます
(出演:湯川トーベン / 石塚俊明 / 友川カズキ / 斉藤哲夫 / 友部正人 / 鈴木慶一 / 鈴木茂 / 佐野史郎 / 大友良英 / 森信行)
ので、そちらもぜひチェックしてみてください。
出演者の1人である友川カズキさんは、来たる3連休の最後の月曜日、
10/9に大阪に来てくれるので、こちらもよろしくです。

10/9(月・祝)心斎橋ホカゲにて
『友川カズキ独演会』HOKAGE 17周年企画
出演 : 友川カズキ
オープニングアクト : ペイ釣ケイスーケ

辻まこと「引馬峠」(『画文集 山の声』中日新聞東京本社 東京新聞出版局刊→ちくま文庫 に収録)より①

 午前九時二十五分、浅草雷門発の東武電車臨時快速号というのに乗った。十月十五日、ちょうど紅葉の見頃だったし、土曜日なので駅は勿論例のごとく雑踏。歩廊のいちばんはずれであきらめていた私の前に、ドアーが開いたおかげで、殺到する人々にもまれず、偶然腰をおろすことができた。

 窓ぎわに長い電車の座席は、外の風景を眺めるのにはよくない。無理に首を曲げていると、いつでもあとから痛みを感じることになる。それでも窓の外の景色さえ見ていられれば、あきることもないのだが、きょうのように、隙間もなく席がつまって、前にも立っている人の壁があっては、どうも着く時間が待ち遠しい。こんなに混んでいるが、大半は遊山行楽のともがらなので、気分はすでに開放されていて陽気である。私は人々の足の林を見、履物のいろいろを観察し、とりとめのない考現学的想像を楽しむ。

 鬼怒川駅着十一時五十分。運賃三百四十円。ここから県境の山王峠を越えて、会津の田島へでるバスの出発時間は十二時五十分。一時間の昼食時間がある。みやげものの売店を兼ねた食堂が櫛比している。駅前のせまい一本みち。その道路も店も人で溢れこぼれている。それを押しまくって、観光バスが警笛を鳴らして、間断なく行き交う。

 閑静を求めて旅をするものにとっては、閉口の風景だが、辟易していては、現代の旅はデキネエ、と勇猛心を奮って、奥にベランダが突き出していて、眺めのよさそうな、その名も“湯の町デパート”と称する一軒に飛び込んだ。晴天だったがいくらか風があってやや寒いので、ベランダには客がいない。

「なにが、おいしい」

「なんでもウマイけっどォ、カツドンが自慢だね……」

 水のはいったグラスをもってきた少女の尻上がりな栃木弁は、すこぶる卒直明快だ。百五十円だしてそれを頼む。眼下に、鬼怒川温泉の街が、ひっくり返した玩具函となって転がっている。背景の山の右の瘤に、街から三百メートルほどのロープウェイが走っていてヴァーミリオンに染ったゴンドラが、あがったりさがったりしている。ゆっくりカツドンを食べながら、ゆっくりカツドンのような風景を眺める。

 結論――この街は私に用がない。私もこの街に用がない。少女に熱いお茶を要求した。


 会津西街道を北へ。田島までのバスは、会津バスという会社のバスだった。よく掃除され、みがかれていて気持ちがいい。地方色の濃い乗客が十数人。観光客は私だけ、もしそういってもよければ……だが。とにかくいたって閑散だ。

 運転手の横の最前列の席に腰をおろし、ザックを下に置いて、ポケットから二十万の日光と五万の川治と糸沢の地図をだし、ピースに火をつけるとやっと落ち着いた。十二時五十分きっかりに発車。私の下車予定の羽塩まで約六十キロ。運賃二百四十五円也。丸顔で爽やかな感じのする少女の車掌に尋ねると、二時間ちょっとで行く、また、木賊温泉行のバスは、約一時間の待ち合わせで乗れる筈だという。そして、いかにも老練らしい半白の運転手に「ナァそうでっショ」と同意を求めた。そのアクセントは、もう会津である。

 このバスには、マイクロフォンもラジオもなく、したがって、チラシ広告のような名所案内や、人間の声や音楽をミックスした雑音がないのですがすがしかった。旅する人々は、それぞれの心持ちで、それぞれの目的があって、偶然おなじバスに乗る。沿道の景色は一つだが、焦点と視野は、一人一人の心持ちのようにさまざまだ。十人の旅人は、一本の街道を異なった十種類の旅をする。だから身振りばかり大きく、押し付けがましい無神経な観光サーヴィスなどないほうが助かる――と私は思うのだが、これも個人的な趣味だとすれば、押し付けるわけにもいかない。ともあれ、雑音のないのは、私にとってかえってサーヴィスのようにおもえた。


ゆっくりカツドンを食べながら、ゆっくりカツドンのような風景を眺める――辻まこと「引馬峠」①_b0420692_22511032.jpg
Ilya Mashkov, Alupka. Resort Park

by caffe-san-marco2 | 2023-10-04 23:03 | 随筆・自叙伝・ノンフィクション・旅行記 | Comments(2)
Commented by saheizi-inokori at 2023-10-05 10:16
そういえば、昨夜の夢でわたしは煙草を吸っていたなあ。場所は会津ではなかったけれど、、マテヨ、毎晩みる夢に出てくる不詳の場所は会津も投影されているのかな。
Commented by Neauferretcineres at 2023-10-06 23:54
> saheizi-inokoriさん
コメントありがとうございます。
僕は会津には行ったことがないので、会津の風景の具体的なイメージがなかなかわかないのが残念であります。福島産の梨は関西でもけっこう流通してます。蒲生氏郷がはるばる赴いた会津若松には一度行ってみたいと思ってます。
福島県出身の作家といえば、苦節十数年の中山義秀がいますね……。
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