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カフェ・サン・マルコⅡ 放逐の地、流謫の空、日常の崖、超常の涯、僕たちの心臓はただ歌い出す


過ぎ越しの少年 歩いてゐる 環百道路の向こう側 不気味に流れる根無し草 道草模様の漂流者 あゝ帰らざる故郷…… 棲めばエル・ドラド…… 記憶のギャラリーで迷子になって…… 愚者の漬物石と隠者の糠床……
by Neauferretcineres
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メモ帳
わてが最近、買うた酒 のコーナー
Kloof Street Swartland Rougeクルーフ・ストリート スワートランド ルージュ 南アフリカ赤ワイン
ふつうアフリカワインのラベルには動物やら何やらの生き物やら野生的な風景やらが
描かれてるものだけど、Mullineux(マリヌー)のこのワインのラベルは
夕暮れ時に一瞬見られる不思議な色合いの青空のような、淡い青の地に
控えめな金色で文字が記されているだけ。
そこがいい。
味は濃厚。空に憧れる土の浪漫と情愛、いささかの辛苦。

もし木さえあったなら、ぼく、退屈なんかしないんだが――エルサ・トリオレ『赤い馬―人間のさまざまな意図―』④

日本語メタ電子パンク進化系のパイオニア平沢進さん率いる、
核P-MODELがとうとう新譜を来月、発売!!
4thアルバム 『unZIP』
10/29(水)リリースです。
(↓こちらの特設ページでは、
平沢進さん本人による
全曲解説付き全曲ダイジェストも聴けますよ!!
アルバム収録曲「パルテノン」の無料配信もあり!!)
レコ発ライブもあるそうです……。
チケットの一般発売はまだのよう、
行きたい人は頑張ってチケット入手してみて!!

2025年/2026年。年の境界をまたぎ、
大阪、東京に非コード人のアコードが咲く。
核P-MODEL「unZIP / 非コード人のアコード」
出演:平沢進 会人SSHO 会人TAZZ
☆大阪公演――Zepp Osaka Baysideにて
2025/12/18(木)開場18:00 / 開演19:00
2025/12/19(金)開場18:00 / 開演19:00​
全席自由(1F スタンディング / 2F 自由席)

☆東京公演――Toyosu PITにて
2026/1/23(金)開場18:00 / 開演19:00
2026/1/24(土)※昼夜2公演
      昼 開場13:00 / 開演14:00
      夜 開場18:00 / 開演19:00
スタンディング

​料金:各公演 税込7,700円

ではまあそんなわけで、
核爆弾で焦土と化した、第3次世界大戦後の世界を描く、
エルサ・トリオレ『赤い馬』のつづきをどうぞ!!

エルサ・トリオレ『赤い馬―人間のさまざまな意図―』より④

 ――まあ! 破いちゃいやよ! 女の声が言った。

 ――だいじょうぶだよ。ほら! ぼく、歌をうたおうか?

――うたってよ。だれも聞いていないから……。

 若い男は、下手くそな節で、ラジオのシャンソンを歌いだした。それなのに、わたしは非情な地面を涙で濡らしていた。もちろん、それはただのギターなのだった。妙(たえ)なるギターのしらべなのだった。

 この男の子は指物師(さしものし)の息子だった。わたしは、ある日、わたしたちの食料の配給をこの子と並んで待っていたとき、この子と話をしたことがあった。わたしとこの子は本当の会話をしたのだった。それはわたしに時間を忘れさせた。

 ――ああ、仕事がしたいなあ。もし木さえあったなら、ぼく、退屈なんかしないんだが。ねえおくさん、ぼく、こんな小さかったときから、木をけずって遊んでいたんですよ。かんなくずとのこぎりくずのなかで遊んでいた。ぼくのおじいさんは棺をこしらえていた。樫の木の立派な棺桶だ。……お父っつぁんは棺はやめちゃった。サント・ノルミエンヌではめったにひとが死なないし、この近所の村ではパリから棺をとりよせるんだ。樅の組立てのやつを! まったく、土のなかで長く保とうと保つまいとこんな連中は平気なんだ。そんないいかげんな奴らさ。おやじは日曜日にやってくるパリ人のためにうんと働いた。この辺にはパリの人の小さな別荘がうんとあったんだ。この辺、景色がよかったからねえ! ほんとですぜ、おくさん。森もあり、牧場もあり、まるで田舎のまんなかにいるような気分だった。……ひがな一日中鋸をひいたり、かんなをかけたり、合わせてのぞいたり、はめこんだりするのをぼくは見てくらした。……うちの父っつぁんときたら、いい仕事をしたねえ! なんでも頑丈なんだ。腰掛ひとつだってなん百年ももとうって仕事だ! お客さんなんか、おやじがあんまり仕事に念を入れるって、木が厚すぎるって、苦情を言ったくらいだ。なにしろ棚板一枚だって二十八ミリもあったんだから! おやじはベニヤ板やなんかで仕事をすることや張り合わせの板なんかは断った。ぼくは、もうちと近代的だったね。ぼくは芸術家具のほうをやってみた。自分でモデルの製図をしてね……。パリから来たおくさんがいてね、芸術家だったよ。ぼくの家具はパリに出品しなくちゃいけないって言っていた。田舎風の、いい仕事のやつだ……。ぼくは仕事場で夜の十二時すぎまで仕事していたことなんかしょっちゅうだったね……おっかさんがうるさいこと呼ぶんだ……ああ、おくさん、ぼく、この手を扱いかねているよ、まったく……。ぼくはここへ隊から休暇をもらって帰ってきていた。そうなんだよ、おくさん……。もう一年にもなるか、おかげで自宅でナパーム弾をくらっちゃったんだ! それからぼくがまだ癒りきらないうちに、奴らまたこいつを落したんだ……。そこで、ごらんのとおりって次第さ。ねえ、おくさん、もう言うことはないよ。もし、ぼくにぼくの道具と板切の二三枚もくれたなら、ぼくは幸せになれるんだがなあ……。

 村の唯一の青年、ギター弾きの指物師はこういった男だった。わたしはジャンヌ、小学校教師の娘のジャンヌのほうも知っていた。なぜって、この村では全部の人が全部の人のことを噂しているからだ。ジャンヌはサント・ノルミエンヌきっての美しい娘だった。パリの人たちさえ、彼女が通りかかると振りかえったそうだ。彼女の叔母にあたるわたしの宿のかみさんは、わたしに彼女の写真を見せてくれた。……そう……ショーツをはいて美しいすねをみせた若い娘……男の子のうしろでスクーターにまたがって走ってゆくような型の娘だ……それがいまでは……。《あの子の両親たちはあの子をあんまり身勝手にさせすぎたねえ。それであの子ったら指物師の息子とばかり遊んでいた。それはまあいいとして、わたしゃあ、クローディがキャンプに言ったりすることは許さないね。男の子と女の子たちだけで、不良少年たちとキャンプに行ったりすることは許さないつもりだよ。》クローディは床の上に坐り、古い人形を抱きながら、つぶれたトマトのような顔、汁の出そうな顔を母親のほうに向けながら、彼女の言うことに聞きいっていた。


もし木さえあったなら、ぼく、退屈なんかしないんだが――エルサ・トリオレ『赤い馬―人間のさまざまな意図―』④_b0420692_11125244.jpg
↑エルサ・トリオレ最晩年の著書

シャンソンを弾き語りで!!
僕の好きなアンヌ・シルヴェストルを。


by caffe-san-marco2 | 2025-09-13 11:38 | 小説 | Comments(0)
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