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カフェ・サン・マルコⅡ 放逐の地、流謫の空、日常の崖、超常の涯、僕たちの心臓はただ歌い出す


過ぎ越しの少年 歩いてゐる 環百道路の向こう側 不気味に流れる根無し草 道草模様の漂流者 あゝ帰らざる故郷…… 棲めばエル・ドラド…… 記憶のギャラリーで迷子になって…… 愚者の漬物石と隠者の糠床……
by Neauferretcineres
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メモ帳
わてが最近、買うた酒 のコーナー
新甘泉 梨の果肉と果汁があふれるお酒国産リキュール 北岡本店
ドンキで売ってた梨リキュール。作ってるのは奈良県吉野の酒蔵。
鳥取県産の梨をぶちこんである。アルコール分は5度。
なんとなく日本海側のエキスを毎日ちょっとずつ摂取したいんよね……。
熟れつつも叙情にこの実は引き締まりて。

夜になればこの界隈は黒曜石の如く悪徳それ自身がもつ立派な燦きを放つ――五味康祐『麻薬3号』

でもまだ春というにはちと早く、
冬の出口でなんやぐずぐずと屯してるような……。
今週はわりとぬくそうやけど、
湿りがちになりそうやね。

さて、今週末の金曜日の夜、
神戸でおもろそうなイベントがありまっせ!!
去年に45周年を迎えたチキンジョージ
記念書籍刊行パーティーを開催です。

2/27(金)神戸チキンジョージにて
『CHICKEN GEORGE 45周年記念書籍 「おい!チキンジョージ」出版パーティー』
 ☆トークライブ
清水興
チャーリー・コーセー
天野SHO
Romel Amado
増田俊郎
 ☆ライブ
原田真二
黒住憲五
藤澤桂子
間慎太郎
前田航(GIA RHYTHM)
ご来場者には 「おい!チキンジョージ」を
1冊プレゼント!
前売券:¥8,000 (フリードリンク、フリーフード)
※45歳以下は身分証ご提示で¥4500

入場料8千円(前売)は高いみたいやけど、
ドリンクとフードがフリーになるみたいやし、
本も1冊進呈される、とのことなので、
むしろかなりお得なんちゃうかなあ……。
原田真二さん黒住憲五さんのライブも観れるし!!
しかも、45歳以下(よかった、僕も該当してるやん)やったら、¥4500やし。
当日券でも入れるやろうけど、本のプレゼントの関係もあるし、
予約しとくほうがええやろうね。

パーティーには行かれへんけど、本は欲しいという人は、
通販等で買えるで(2/27発売です)!!
ジュンク堂書店三宮店にも並ぶみたいね。



昔のチキンジョージのライブ映像は
YouTubeにはあんましなさそうやね。
音声だけのはあったけど。

てなわけで、今回は神戸が舞台の文章を読んでみますか。

五味康祐『麻薬3号』(文藝春秋新社刊→講談社ロマン・ブックス)より

 省線のガードと下山手通り六丁目筋の交叉するあたりに、鉄筋コンクリートのモダン寺がある。寺の青い円塔は汽車の窓からも見える。神戸の人間でモダン寺の名を知らぬ者はあるまい。それほど付近のうす穢い家並に巨きな青緑の円屋根が聳え、明治時代、神戸が『異人さん』の町だった名残をとどめる。

 モダン寺の講堂は時に合唱隊の発表会場に使われたり地方劇団の舞台にされる。が平日は殆ど空いている筈だ。寺の地下室は幾つかの室に仕切られており、幾つかの世帯が其処で生活している。私が北海道で六カ月の刑を了えて神戸へ来たとき世話になった蔦婆の室もその一つだ。蔦ばばあは酔うと「お蔦」という名を自慢するのが悪い癖だが、しらふの折も酔っている時と同様気前がいいので、われわれ仲間には人気があった。年寄で独り身の世帯費は、むろんポン引をしてかせぐ。

 モダン寺と六丁目すじを距てて中山組の事務所がある。[略]

 事務所に女を引入れて私は燃え残りのストーブを搔立てた。名を尋ねると阿部啓子と答えた。年は二十四歳と云ったので、「若く見える」と私はつぶやいた。彼女は有難うと言った。我々は間もなく表へ出た。

 肩を並べて歩くのを憚る気分のおこるのは、啓子の美しさのためでない、堅気の女だからではない、と私は自分に吩(い)いきかせる必要があった。啓子の明日は、われわれとつながりを持った以上、実は何うなるか分りかねるのだ。彼女の明日には変事がおこるかもしれぬし、その場合、並んでいる所を人に記憶させておくのはけっして賢明ではない。私は裏通りを歩いた。彼女は何も知らぬから、神戸の街は思ったより下品なのね、と言い、私の想像して来たとおりだった、と言った。織田がこういう生活をしているに違いないと思って来た、というのだ。「愛しているのか」私は尋ねかけたが馬鹿らしいので止めた。

 モダン寺の前を私は何気なく通りすぎた。ゴローの店では都合よく誰も我々を見なかった。冬の空はどんより曇りを垂れ次第に暗くなってゆく。夜になればこの界隈は黒曜石の如く悪徳それ自身がもつ立派な燦きを放つ。宝石に魅入られるように人々は悪の虜(とりこ)となった自身に、陶然とする。

 啓子は黙りがちになった。不安が彼女を脅かしはじめてきたのを私の所為(せい)にしているのだ。それほど我々は歩いた。私は彼女にまだ信じられている自分を知って倒錯した恍惚感を味わった。啓子はいい胸をしていた。帽子に紗(ベール)が垂れていればその儘銀座を歩いたって引立つだろう。両親があって、両親の名を云えばそれで駐在所の巡査は安心して、彼女は確乎とした一人の生存者となり、彼女の年齢と在学証明書と邸と邸の所番地とがあれば、彼女は愛がなくても誰にも怪しまれずに生きていられる。遠く離れていれば織田という男にしたって、住所と姓名だけで、彼女にとって彼女自身と同じぐらい確かな生存者と思えるのだ。それを郵便局が証明したわけだ。だから彼女は見知らぬ街へ”愛”の方を求めて出て来た。いつでもこの旅行が失敗すれば元の確乎とした何某家の娘に返れるつもりで。

 ――併し、尋ねて来た場所が悪い、相手が悪い、恐らく無事に元の『生存者』の位置へは戻れないだろう、という事を未だ啓子は知らない。警察も在学証明書も父母も役立たぬ場所が都会にあることを知らない、――何という魅力だ。知識や履歴や家庭や両親が一切剝脱され、姓名さえ忘れられて確たる肉体だけはその儘私の手に入る!……and the son of man betrayed to be crucified, after two days. ――二日の後に、人の子は十字架につけられん為に売らるべし。私は学生の昔の気分に一瞬かえった。


夜になればこの界隈は黒曜石の如く悪徳それ自身がもつ立派な燦きを放つ――五味康祐『麻薬3号』_b0420692_10493352.jpg
夜になればこの界隈は黒曜石の如く悪徳それ自身がもつ立派な燦きを放つ――五味康祐『麻薬3号』_b0420692_10565942.jpg

by caffe-san-marco2 | 2026-02-23 11:28 | 小説 | Comments(0)
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